肺癌に限らず、癌の進行度、いわば癌の進み具合に関して、巷で、若い人の癌は早く、年寄りの癌はゆっくり、だと聞いたことがあります。ところがこれは全くの誤りです。同じ臓器の癌でも種類と、その癌の時期、これを病期と言いますが、それらによって進行速度は異なります。

肺癌について若い人で進行が速いということでは、20歳くらいの女子学生で肺癌になった方がいらっしゃいました。この方は進行が早くてお亡くなりになりました。しかし若くてもゆっくりの方もいらっしゃいます。31歳の女性で健康診断の胸部X線写真で異常陰影をチェックしました。直接お話を伺いますと、以前から肺炎で影がある、と言われ、以前の胸部X線写真を比較してみたところ、25歳の時から毎年撮影され、1年ごとに徐々に大きさを増し、6年間では明らかに増大しています。気管支鏡で肺癌との診断の元、左肺の下半分、下葉切除術が施行されました。現在、50歳台半ばで、お元気に仕事を続けておられます。

どの臓器の癌でもいくつかの種類がありますが、肺癌はタバコの影響があるともいわれ多くの種類があります。その中で、腺癌、扁平上皮癌、小細胞癌、大細胞癌の四つが代表でしょう。そして肺癌のうち半数以上は腺癌で、次に扁平上皮癌が続き、小細胞癌や大細胞癌は少なくなってきます。

この中で腺癌では進行がゆっくり進行する場合があります。上に述べた31歳で左肺の下葉切除の女性も腺癌でした。一方、小細胞癌は進行が速く、転移もしやすいことがあります。これらの肺癌の発生する場所も特徴があり、腺癌は肺の末梢、すなわち肺の奥の方であるのに対し、扁平上皮癌や小細胞癌は中枢気道、すなわち肺の入り口の気管支に発生します。しかし近年、扁平上皮癌は肺の末梢で発生することが多くなっています。

肺癌と言えばタバコとの関連が指摘されます。上に述べた左下葉の腺癌だった方は非喫煙者ですが、タバコを吸わない、特に女性の肺癌は多くが腺癌です。以前、腺癌はタバコと関係がない、とも言われましたが、やはり喫煙者に多いことも分かっています。扁平上皮癌は喫煙者に多く、小細胞癌はほとんどが喫煙者です。

なぜ末梢発生の癌が多くなったか。これはタバコにフィルターがなかった頃は、煙がきつくていっぱい吸えなかったものの、フィルターのタバコが増えて刺激も少なくなって煙をめいっぱい吸うため、とも言われます。扁平上皮癌での中枢発生が減少し、末梢発生が増加しているのは日本だけでなく世界的な傾向です。

喫煙者が肺癌になるリスクはタバコを吸わない人に比べ、男性で4.4倍、女性で2.8倍と高くなると言われます。またタバコを吸わない人でも他人のタバコの煙を吸う、受動喫煙でも肺癌になるリスクは高くなります。

1902#2ジャスパー、カナダ

 

 

 

ジャスパー、カナディアンロッキー、

カナダ