新型コロナ感染を含め、ワクチンによる健康被害が話題になったのはいつ頃からでしょうか。戦後ワクチン接種の義務化で感染症による死者数が減少しましたが、1989年から開始されたMMR(麻疹、流行性耳下腺炎、風疹混合)ワクチンで髄膜炎が発生し訴訟が相次いだことが大きく報道され、それが影響したのではないでしょうか。それに伴い世界に先駆けて開発に取り組んできた我が国の製薬業界も消極的になるなど、我が国が「ワクチン後進国」とも称されるようになったと思います。

ワクチン接種と言えば、最近の子宮頸癌を予防するためのHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンが思い浮かびます。この度2021年9月、日本対がん協会によるがん征圧全国大会記念がん検診セミナーで、子宮頸癌ワクチンについて鹿児島大学の小林裕明教授がご講演されましたので、その内容の一部をご紹介しましょう。子宮頸癌は若年化しており、頸癌と出産のピークは30歳代前半で重なります。そのため頸癌の治療との兼ね合いで、子どもを産んでない女性がお母さんになる機会を失うことになり得ることから、この癌のことが「マザーキラー」と言われるゆえんとのことです。また妊婦さんに子宮頸癌がみつかることがあり、出産した赤ちゃんの肺に癌が転移した例も報告されたそうです。そのような中でワクチン接種が導入されましたが、接種後の女子生徒が種々の障害が報告され「被害者」の表現で報道されました。そのため厚労省が積極的勧奨を中断し、8年が経過しました。

しかしこのところ、外国からの報告ではワクチン接種によりHPV感染が激減しているなど、WHOは2030年時点で世界の9割の人がワクチンを接種し、7割の人が検診を受け、9割の比地に治療ができれば2090年までに「撲滅」に入ると試算しています。副反応に関してWHOは「接触ストレス関連反応」との概念を提唱しているそうです。つまり接触にまつわる不安から生じる反応で、年齢、ワクチンや薬剤への不安、マスコミなどメディアから受けるネガティブ情報などが要因としています。このような状況で、積極的勧奨に近い動きのある自治体も出てきたそうです。厚労省も子宮頸癌のリーフレットには、打てる人にはしっかり周知し、接種機会を確保すると明記しています。

婦人科医の合言葉は「10代でワクチン、20歳から検診」。医療関係者はワクチン非接種でも思春期には多様な症状が生じやすいことを理解して対応、そして予防の両輪であるワクチン接種率と検診受診率の向上させることと発表されています。

子宮頸癌がない時代を迎えたいものです。

首都ビリ7b3ca76fff4714f94d6f46f318e11937ニュスの市庁舎前広場

リトアニア(バルト三国の一番南)

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