肺癌の検査で痰の検査、これを喀痰細胞診と言いますがご存知でしょうか。肺に癌があって痰が出るときに一緒に癌細胞が出てくれば癌の診断ができる、ということはご理解いただけることと思います。

でも多くの方は検診で、胸部X線写真は撮ったことがあるが痰の検査はしたことがない、という方が多いのではないでしょうか。この喀痰細胞診は、基本的にはタバコをたくさん吸って癌の危険が高い、いわゆる高危険群の喫煙者に対して行われ、タバコを吸わない方、吸っていても吸う本数が多くない人には行いません。

それはなぜでしょう。タバコを吸う人には、口に近い気管支、すなわち中枢気道に発生する扁平上皮癌が多く発症しました。この場合、肺の奥の方で発生した痰が次第に口の方へ出ていく時、途中にある癌の表面をこすりながら出ようとして、結果的に痰の中に癌細胞が含まれることになります。痰が癌の表面をこする、つまり痰と癌の位置関係で単に必ずしも癌細胞が入るとは限りません。そのために喀痰細胞診は一回だけではなく複数回実施される、あるいは複数の日に採取した喀痰を検査することになります。喀痰細胞診の対象の方はタバコをたくさん吸う人、つまり喫煙指数が高い人になります。喫煙指数とは1日に吸う本数に吸った年数を乗じた数字になります。例えば1日に20本を30年間吸うと20かける30 の600になりますし、10本を40年なら400となる、というぐあいです。したがって喀痰細胞診の対象の方は、年齢が50歳以上で喫煙指数が600以上の場合、あるいは50歳未満でも最近、血痰があった方などを対象とするなど、一定の制限を設定するとことが普通です。

これは肺の末梢から発症する肺癌は腺癌が多く、この癌はタバコを吸わない人にも発症します。肺の末梢で癌が発症すると、そのさらに末梢、奥の方から出てくる痰が癌細胞を含んで口から出てくる可能性が非常に低くなってきます。と言うことで細胞を検査する検査師の負担が増え、費用もかかるため、費用対効果の観点からも検診ではタバコを吸わない人への喀痰細胞診は実施されません。

今回、肺癌における喀痰細胞診についてお話しましたが、喀痰細胞診で肺癌だけではなく他の癌の発見につながることがあります。痰が肺の奥で産生されて口から出ていく過程を考えてみれば分かることですが、その途中に癌があれば肺癌ではなく他の部位癌の細胞を持ってきてくれることが理解していただけることと思います。その代表例は喉頭癌です。肺癌は内科や呼吸器外科が取り扱う疾患で、喉頭癌は声を出す部位である声帯に発症し耳鼻咽喉科で取り扱う疾患というイメージがないでしょうか。喀痰細胞診で癌細胞が検出され、検査の結果は肺や気管支には異常がなく、耳鼻科紹介で喉頭癌が診断されることがあります。喉頭癌はタバコを吸うときの煙が通過するためか、タバコを吸う人に発症します。

タバコを吸う人、吸っていた人、濃厚に受動喫煙にさらされる人、このような方々は喀痰細胞診のことを頭に入れておいていただきたいと思います。

1904#4チェスキー・クルムロフ城

 

世界で一番美しいとされる村、

チェスキークルムロフ

チェコ