以前、このコーナーでいわゆる「新型タバコ」として、加熱式タバコや電子タバコのことをお話したことがあります。このたび、これに関連して国立保健医療科学院の稲葉洋平先生のお話をWeb講演でお聞きする機会があり一部をご紹介します。稲葉先生は加熱式タバコ等が市場に導入されてまだ日が浅いことから、発癌リスクを中心とした疫学的なリスク評価についてはまだ不明とは言え、現在までの成果の一部をお話下さいました。

その中でのお話です。加熱式タバコとして最も普及している IQOS では主流煙中のニコチン量は標準紙巻タバコの約半分から同程度のニコチンが検出されました。一方、有害物質の中では紙巻タバコの 5 分の 1 程度、一酸化炭素濃度は 100 分の 1 程度に軽減 されていたそうです。しかし、その他の化学物質濃度も低減されているものが多くありましたが,グリセロール類など紙巻タバコ以上の濃度を示す化学物質もあったそうです。すなわち低減されていない有害化学物質も存在することを忘れてはなりません。

タバコに含まれるものとしてニコチンとタールが挙げられますが、タールという単一の物質はなく、何百、何千という多くの物質の総称をタールと言っています。したがってタールがない、タールが減少した、といってもタールの定義が明確ではないことがあります。

加熱式タバコから発生するエアロゾルには紙巻タバコに比べ有害性が低減されているとして,タバコ産業は害が少ないと宣伝します。しかし発癌物質および依存性を引き起こすニコチンを吸入することから、紙巻タバコとの二重使用や非喫煙者の喫煙への道、すなわちゲートウエイ、禁煙効果等について結論も、また有害化学物質の曝露量の低減は確認されているものの、健康影響の改善までは確定していません。加熱式タバコ喫煙者の禁煙は望めないとする研究者もいます。

現在、加熱式タバコ等に関する研究報告は、たばこ産業からの報告が多くされています。したがって公衆衛生機関や中立的な立場の研究者から、加熱式タバコ等の長期的な利用による健康影響に関する研究報告が積み上げていくことが望まれます。少なくとも加熱式タバコ等の使用でもニコチン依存は続き、使用により排出される副流煙による受動喫煙は逃れられません。

稲葉先生の今後のご研究にも注目いたします。

フランクフルトbfa25f2bb521a799957add6c8a4976dbの近く、ライン川のほとり。小さな町で「つぐみ横丁」というワインの居酒屋が観光客に有名。

リューデスハイム、ドイツ

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