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文責 医局 大西

皆さん、新年あけましておめでとうございます。

さて今回は、女性であることと、骨粗鬆症についてお話ししたいと思います。膠原病の患者さんは、女性が多いため、是非知っておいて欲しいことです。

「女性として生きること」

日本の女性の平均閉経年齢はほぼ50歳です。平均寿命が83歳であることを考えると、閉経後私たち女性は、30年以上にわたって、女性ホルモンの欠乏状態で過ごさなければなりません。
50歳以上の女性が排卵しなくなると言うことは、高齢妊娠による母児の危険を回避するためには合目的ですが、卵巣からの女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの分泌が停止する事は、
数多くの障害を引き起こします。(神様は意地悪です!女性で無くなったと同時に、私たちから健康を奪おうとするのです!)

まず、自律神経失調に基づく血管運動神経障害による顔の火照りや異常発汗、のぼせ、動悸、めまい
が一般的によく見られます。

また、そのころに遭遇する環境によって不安や不眠、頭重感など精神症状が強く出る人もいます。

また、関節痛、むくみ、こわばり等も生じます。そのほかに、エストロゲンの急激な減少により、脂質代謝が異常を来すため、高脂血症になる人も
多いです。(最近、中高年女性のライフスタイルの特徴は、グルメ指向、運動不足、肥満、喫煙であり、これらがさらに高脂血症や動脈硬化を来すと言われています)

高脂血症の発症率は

男性 30〜70歳で20%〜30%程度
女性 50歳以下で15%〜30%

50歳以上で40%〜50%

虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)は

  • 50歳未満:男性>>>女性(半分以下)
  • 50歳より女性が急増
  • 60歳以上:男性=女性

となるのです!
また、閉経後の10年間で骨粗鬆症が急激に進む事は良く知られています。これも女性ホルモンの低下によるものです。

これについて、詳しく説明しましょう。

骨粗鬆症とは

骨粗鬆症とは、骨が弱くなり折れやすくなる病気です。寝たきりにならずに元気に長生きするために骨折をしないこと!
これが骨粗鬆症の治療の目指すところです。
見てください!
骨粗鬆症の患者さんの骨の状態です。こんなに骨がうすくなっているのですよ!

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女性の骨量(骨の成分)の増減を示します。
20歳から40歳で最大の骨量となり、50歳の閉経から約10年で急激に(約10%も!)減少し(これを閉経後骨粗鬆症といいます)その後も減り続け老年期骨粗鬆症となっていきます。
男性の場合は60〜70歳くらいから老年期骨粗鬆症になっていきます。女性は男性に比べて、閉経期にどんどん骨量が減少するため骨粗鬆症が多いのです。

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それでは、どうして骨が薄くなっていくのでしょう。

骨は、常に破骨細胞にこわされ(骨吸収)、骨芽細胞によってつくられて(骨形成)バランスをとっています。

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骨吸収>骨形成となると骨量が少なくなり骨粗鬆症となります。
閉経期の骨粗鬆症は骨形成も盛んに行われるのですが、それ以上に骨吸収が多くなっているため、
どんどん骨量が減ってしまいます。老年期は、代謝が落ちるため骨粗鬆症になります。

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骨粗鬆症を治療するにはどうしたらよいでしょうか。

まず、20歳から40歳の最大骨量を増やしておくことです。
そのためには、
若い頃から毎日乳製品をとること!
毎日600mg以上のカルシウムをとること!
それ以外に
    極端なダイエット、運動不足、喫煙、過度の飲酒、多量のコーヒー
    食塩の過剰摂取、インスタント食品の食べ過ぎによるリンの過剰摂取
等を避けることが重要です。

閉経期骨粗鬆症の治療には
ビタミンD(カルシウムの腸からの吸収を良くし、利用しやすくする)
カルシウム製剤
ビタミンK(納豆に多く含まれており骨の構造を強くする)
ダイドロネルやフォサマックといった骨吸収抑制剤
女性ホルモン補充療法
等があります。医師と相談してください。

閉経期(更年期)をいかに乗り切るか・・・

私たち女性の大きな課題だと思います。

このことは、膠原病をもっているかいないにかかわらず、すべての女性に当てはまることと思います。
最近では、アメリカを中心として、高脂血症や虚血性心疾患、骨粗鬆症に対して積極的に女性ホルモン
補充療法を行う傾向にあります。
日本では、発癌(乳癌や子宮癌)との関係や、ホルモン療法に対する国民的アレルギなどにより、なかなか
普及していませんでしたが、ここ10年前から婦人科を中心に、ホルモン療法が盛んになって来つつあります。
今後、日本でも盛んになっていくのではないかと思います。
それに向けて、当院でも個々の患者さんと相談して治療しています。

心配な方は医師にご相談下さい

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平成14年1月4日発行